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ショートストーリー1(ルナ・銀河・夜明) 5ページ目

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 中に入っているのは、

 【ハッピーバースデー 夜明先輩】

 と描かれたチョコプレートの載った、ホールケーキであった。
「え」
 夜明がぽかんとした顔をして、
 銀河とルナは、せーので言う。
「お誕生日おめでとうございます、夜明先輩!」
 隠し持っていたクラッカーが、ぱん! と鳴った。ちゃちな紙吹雪がひらひらと室内を舞う。
「ど、どうして、」
「水くさいですよ、夜明先輩」
 銀河は、にい、と笑い、
「実は先日、先代部長とお会いする機会があったのです。そこで夜明先輩の誕生日が十二月の二十五日だと聞きまして」
 ちらりと時計を見やって、
「まあ二十五日まではあと四時間ほどありますが、教会暦だとでも思ってください」
「さっきのとは別に、プレゼントも用意してありますよ」
 ルナは鞄からラッピングされた箱を取り出し、夜明に差し出す。
「もちろん、俺からもです」
 銀河もまた、手品のように取り出した箱を手に載せて、夜明に示した。
 夜明は何か騙されているような顔で二人を見つめていたが――
 ややあって、
「……あ、ありがとう」
 うつむき、前髪で顔を隠しながら、ぽつりと呟くように言った。
 銀河は笑い、
「年に一度の誕生日です。夜明先輩がこの世に生まれてきてくださったことに、感謝します」
「……」
 二人の手からプレゼントを受け取り、夜明は少し緊張したように、
「あ、開けても、いい?」
「ええ」
「どうぞ」
 夜明はルナの箱を一度テーブルに置いて、まずは銀河のものから、ラッピングのリボンをほどいて包装紙が破れないように開いていく。
 夜明の目がわずかに見開かれ、口元が少しだけゆるんだ。
「こ、これ……」
「『魔法少女リトルマジカル』の限定フィギュアです。先輩は買い逃していたでしょう」
「お、憶えててくれたんだ」
 リトルマジカルというのは日曜の朝にやっている魔女っ子アニメである。この3人は全員が視聴者であるが、特に夜明が好きな作品というのが共通認識であった。
「喜んでいただけたのなら何よりです」
「あ、ありがとう……」
 夜明はフィギュアの箱をそっとテーブルに置き、今度はルナのプレゼントを丁寧に開封する。
 そっと箱の中から取り出されたのは、こちらもリトルマジカルデザインのデジタルフォトフレームだ。
「色々考えたんですけど、えっと……こういうグッズって使わないでしまっておくことも多いと思うんです。でも、もし――」
 言いかけたルナの言葉を遮って、夜明はほんのわずかに微笑む。
「う、うん。しゃ、写真、一緒に撮ろう? へ、部屋に飾るから……」
 ルナは笑顔で応える。
「はい!」

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