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ショートストーリー1(ルナ・銀河・夜明) 6ページ目

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 スマートフォンの自撮りモードで目一杯腕を伸ばしながら、フレームの中に三人肩を寄せ合って収まった。
 撮れた写真の夜明はほんの少しだけ照れの見える無表情で、ルナと銀河はいい顔で笑っていた。
 満足げな二人の横で、ルナも写真を見つめて――
 写真の背景に目を止める。
 はじめは、ごみかと思った。
 三人の背景、窓ガラスの向こうの闇の中に、白い点が写っていたのだ。
 しかし、背後を振り返って、
「あ」
 気付く。
 窓の向こう、濃紺の夜空に、ひらひらと白い粒が舞い始めていた。
「……雪だ」
 ルナが呟き、銀河と夜明も窓を見やる。
「おお!」
 銀河は窓に駆け寄って空を見上げた。
 舞い落ちる雪は徐々に、少しずつ勢いを増していく。
「ホワイトクリスマスではないか!」
「ほ、ほんとだ……」
「しかし喜んでばかりもいられんな。徒歩で帰宅できる夜明先輩はともあれ、ルナくんには電車の心配がある。とりあえずケーキを食べて、解散とするか」
「って、大事なこと忘れてる」
 ルナは言って、箱の中に収められていた十七本の蝋燭をケーキに突き立てていく。
「火を点けて、電気消して、バースデーソングを歌って、夜明先輩に消してもらわないと」
「ああ、たしかこのあたりに、夏に花火をやったときに使ったライターがあったはず……おお、あったあった」
 銀河が全ての蝋燭に火を点けて、電気を消した。
 ルナと銀河は二人でハッピーバースデーを歌って、
 肺活量の無い夜明が、少しだけ大変そうに、蝋燭の火を吹き消した。

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