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ショートストーリー6(夕陽・銀河・ルナ・夜明・ひなた) 1ページ目

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※今回はメタ発言が含まれているのでご注意ください。

 2研の部室内。
 中央にスチール製の会議机。部屋の左右に本のつまった本棚、正面には漫画のポスターが貼られた窓ガラス。いつものように中央奥の席に銀河が座し、そこから時計回りにルナ、夕陽、ひなた、夜明、そして銀河に戻る、という順に座っている。
 銀河は、ばん! と机を叩いて立ち上がり、右の手をぐっと顔の前で握りしめて叫ぶ。
「ということで、本日は『第一回、ひなたくんのキャラがうすいのをどうにかしよう会議』を行う!」
「……」
「……」
「……」
 一同はしばし銀河を見つめて沈黙し、
 夕陽がおそるおそる挙手をしてから、
「あの、それって本編二巻用のストックネタじゃないですか?」
「そうですよ、私が2研の中で存在感がないのを気にして相談するっていう話は、けっこう二巻でメインになる予定の話だったと思うんですけれど」
 ひなたも続けて言うが、銀河はくいと眼鏡を押し上げながら首を左右に振って、
「いや、二巻が出るか出ないかは一巻の売れ行き次第だしな。ストックしておいて無駄になる可能性も高いわけだ」
「で、でも、もし読者の皆さまのおかげで、に、二巻が出せることになったらどうするの?」
 夜明の質問にも銀河は当然のように、
「そのときは新しくネタを考えればいいでしょう。どうしてもアレなら、しれっとこのページを削除して使いまわすという手がありますし」
「って、このショートストーリー、ぽにきゃんBOOKSさんのブログにも載るんですよ?」
 ルナも言うが、銀河はきっぱりと、
「ブログ担当さんに『あれやっぱり使いたいんで削除してください』って泣きつけば、まあなんとかなろう」
「……それはどうかと思いますけど」
 夕陽の言葉に、銀河は笑って、
「まあ細かいことは気にするな。著者がまた考えればいいだけの話だ。俺たちが気に病む必要はない」
 言い切って、それでこの話題は終わりだとばかりに一同を見回す。
「それでは、案を思いついた者から言ってもらおうか」
「……」
 しばしの間。
 誰もが他の全員の顔色をうかがうように、沈黙が室内に満ちて――
「――えっと、それじゃあ、僭越ながら私から」
 ルナがそう言って、フリップを机の上に出した。
 書かれている文字は、

【男になる】

 一同の視線を集め、ルナは勢いよくしゃべり始める。
「つまりですね、この部に何が足りないかっていえば、男っケですよ。だいたいが担当さんに提出した企画の段階では男子部員ばっかりだった『赤井くん』のはずなのに、なんかできあがってみれば女子ばっかりになっちゃって、ホモホモしさが全然ないんです。せめてひなたちゃんが男になって夕陽くんと事あるごとにいちゃいちゃすれば、問題は軽減されます! 私も嬉しい!」
「……」
「……えっと、」
 ひなたが遠慮気味に挙手、
「夕陽くんといちゃいちゃするのは、その、まあ、なんていうか、キャラを立てるために必要っていうなら喜んで――あ、別に喜んでって言っても嬉しいわけじゃなくて、その、」
 こほん、と一度咳払いをして仕切り直し、
「と、とりあえず、どうやって私が男になればいいんですか。話はそこからです」
「そりゃまあ、実は男だったパターンだろうなあ」
 銀河は当然のように言う。
「いわゆる男の娘ってやつだ――と言ってもひなたくんは知らんか。なんというか、見た目は普通に女の子にしか見えないのに、実は『生えてる』という、一部で人気のジャンルだな」
「でも、ひなたちゃんと私たち、本日2月3日にぽにきゃんBOOKSさんから発売になる『赤井くんには彼女がいない~ハッピーエンドの描き方~』の七章で、一緒にお風呂に入ってますけれど。本日! 2月3日に! 発売になる! 『赤井くんには彼女がいない』で、一緒にお風呂に入ってますけれど!」
 ルナは額の汗を腕で拭う仕草をして、
「ふう、実に自然にCMを入れられました」
「いや……二回言ったし、めちゃくちゃ感嘆符ついてたし、あんまり自然じゃなかったが」
 銀河はこめかみに汗、
「まあともあれ、それくらいならば『実はあのときは男だってバレそうな超ピンチだったのだけれど、挟んで隠してました』とかで乗りきれるんじゃなかろうか」
「で、でも、く、口絵見開きカラーで、ひ、ひなたはわりと、か、身体が出てるから……」
 夜明が言って、一同はなんとなく中空を見つめる。
 たしかに、ひなたは浴槽の縁に腰をかけていたはずなので――
 銀河はがりがりと頭をかき、
「……それは後で確認だな。まあ、この案は保留ということでいいだろう」
「ほ、保留なんですかっ!? 普通に却下じゃなくてっ!?」
 ひなたが悲鳴に近い声をあげるが、銀河はスルー、
「では、次の案だが、俺のものが近いので」
 と言って、フリップにフェルトペンをきゅきゅきゅと走らせ、皆に見せる。


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