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ショートストーリー1(ルナ・銀河・夜明) 1ページ目
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レースのカーテンのついた出窓と、綺麗なクローゼットと、ふかふかのベッド。
壁一面を覆い尽くす本棚と、アニメのポスターと、学習机に積まれた漫画の山。
女の子っぽさとオタクっぽさが混在する部屋の中、白石ルナはドレッサーに向かい合って身支度を整えていた。
ふわりとしたゆるいウェーブの髪に、トレードマークの大きなリボンを結び直す。
鏡の中の自分に微笑んでから、白いニットセーターとフレアスカートの上にダッフルコートを羽織り、マフラーを巻いて部屋を出る。
――と。
「ルナ、出かけるの?」
キッチンから出てきた母に声をかけられた。
ルナはブーツの紐を結びながら、
「うん。夕ご飯はいらないって言ってあったよね?」
「聞いてるけど。デート?」
「違う違う、クリスマス会だってば。全員女の子」
ルナの弁に母はため息一つ、
「ルナも高校生になったんだから、彼氏の一人くらい作ればいいのに」
「私はそういうのはいいの」
「でもほら、男の子同士の恋愛ばかりに興味を持つのも」
「……いってきます」
聞かなかったフリをして、玄関扉を開けて外に出た。
寒い。
息を吐いてみると、白く溶けて消えた。
空は曇天。太陽は沈むか沈まないかという時間だが、あたりは暗い。
もしかすると、ホワイトクリスマスになるかもしれない。
そんな期待に少しだけ胸を躍らせながら、ルナは歩き始める。
そもそも2次元文化愛好研究部――「2研」でクリスマスパーティをやろうと銀河が言いだしたとき、ルナは乗り気ではなかった。
なにしろ年末と言えば、年に二回の大規模同人誌即売会「コミックパッション」通称コミパが開催されるのだ。小さな同人誌即売会にもちょくちょく顔を出しているルナではあるが、やはりコミパは特別な「お祭り」なのである。体調管理も含めて、数日前から準備はしたい。
それに、クリスチャンでもないのにクリスマスを祝うのはちょっともにょる……というか、何かこう、引っかかるのだ。
だが。
(……何をあげたら喜ばれるかな)
ルナは数日前から考え続けてきた。
予算は、そう多くない。
コミパのために母に無理を言って借りた(お年玉で返す予定である)お金はいくらかあるが、それを使い切ってしまっては本末転倒というものだ。
人にプレゼントをするという行為が、ルナは好きだ。
もちろん学生の身である、そんなにお金のかかった贈りものはできないが、その分は心でカバーしている――つもりだ。相手が喜ぶものを考えて、自分にできる範囲で贈れるものを贈るのである。個人的には「相手が自分で買うほどではないけれども欲しい」ぐらいの物を贈るのがベストなのではないかと思っている。
駅前の雑踏を抜け、改札へと入る。
(カップルさんが多い気がする……クリスマスイブだから、かな)
あるいはそれが気になること自体、クリスマスイブだからなのかもしれない。
ホームの電光掲示板を見上げ、次の電車の時間を確かめてから、
ルナは近くにいる中学生ぐらいの男子二人組に目を止めた。
わりと可愛いタイプ――なのはいいとして、その距離が微妙に近い。気がする。
その姿を見つめながら――
ルナは妄想する。
その内容にまでは、触れまい。
ただ、ルナは実にしあわせそうに、にへら、と笑う。
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