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ショートストーリー6(夕陽・銀河・ルナ・夜明・ひなた) 4ページ目

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 そこには、

 何も書かれていない。

 一同の疑問の目を前に、夕陽は少しだけ気まずそうに話し始める。
「いや、俺も考えたんです。完全なネタとしては、トライテールにするとかデュアルツインテールにするとか。少し真面目なのでは、オタク属性を何か一つ特化させるとか。そもそもの出だしでいえば、銀河先輩が漫画、俺がライトノベル、夜明先輩がゲームで、ルナ先輩が腐女子。そういうのがひなたさんにはないって話だったわけですから。でも、そういうのって、なんか違う気がしたんですよ」
 視線を一同から外し、
「別に、今まで皆さんが出してくださった意見を否定するわけじゃあないんですけれど。2研のメンバーはわりと個性が強いから、その中で引け目を感じちゃう気持ちもわかるんです。でも……うまく言えないですけど、そこに変な何かを付け足すんじゃなくて、ひなたさんは、ひなたさんのまま伸びていけばいいんじゃないかな、って。無理な味付けなんかしなくても、人って、それぞれ魅力的なものだと思いますから」
「……」
 銀河が、いつものように中指で眼鏡を押し上げた。
「――さて、これで全員の意見が一通り出揃ったな」
 そして、誰が何を言うよりも早く、ひなたを見やって、
「ひなたくん、無理にすぐ決める必要はなかろう。今日のところは皆の意見を持ち帰って、少し考えてみてはどうかな」
 ひなたはその言葉に、少しだけ間をおいて、
「……そうですね」
 と言って、小さく微笑む。
 銀河は立ち上がり、
「さて、五時だ! 今日も帰宅せねばならん時間になったぞ! 駅前の本屋に寄って、本日発売になった『赤井くんには彼女がいない』を買って帰ろうではないか!」
「……いや、いいですけど、あの本屋さん絶対人数分も入荷してないと思いますよ」
 夕陽の言葉に銀河はうなずき、
「書店さんに買いたい本がないときは、ネット書店を利用するのも手だが、まずは遠慮なく店員さんに尋ねるといい! それは全ての本の著者が望んでいるだろう! おすすめはスマートフォンに本の情報ページを表示しておいて『この本ありますか?』と聞く手だ! それならば敷居も低いだろうしな! さあ、行くぞ、皆!」
 銀河がかかかと笑いながら2研の部室をあとにする。
 ルナが、くるりと『こちら』を向いて、
「――ということで『赤井くんには彼女がいない。発売直前ショートストーリーズ』はこれでおしまいになります。できればまた、本編でお会いしましょうね」
 ぺこりとおじぎをする。
 それを聞いていたひなたと夜明が、
「え、あれ、これでショートストーリーって終わりなんですか? 全部? 私のお料理教室のネタは?」
「せ、性別転換……い、いわゆるTSネタもまだやってない……」
「今回のは基本、俺たちが出会う前の話ですからね……2研の一同でFatal Funeralの世界を冒険するっていうファンタジー編もできませんでしたし。――まあ、二巻が出せることになったら、その時にまたやればいいんじゃないですか? ということで」
 夕陽の合図に従って、

 一同が唱和する。

「みなさま、最後までお読みくださって、本当にありがとうございました!」

ss-6


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