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ショートストーリー3(???) 4ページ目

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 それから、ちまちまとメッセージをやりとりする日々が始まりました。
 私は千夏を「千夏」って呼ぶようになりましたし、千夏は私を「こはるん」って呼ぶようになりました。
 メッセージは、漫画とアニメの話が主でしたけれど、少しずつお互いのパーソナルに関する話もするようになっていって……もちろんその時点で意気投合はしていたんですけれど。それが決定的なものになったのは、二人のコンプレックスについての会話からでした。
 えっと。
 いやまあ、先生はご存知だと思いますけど。
 私、自分が子供っぽいの気にしてるじゃないですか?
 なんていうか、見た目が。全体的に。
 で、えっと、千夏は当時から私より少しだけ背が高くて、ボブカットの似合うかわいい子でしたけれど。
 えーっと。
 わりと、ぺったんこなのを気にしていた、というか。
 どういう流れだったかな……とにかく、お互いのコンプレックスでした。それが。
 私はこう言いました。千夏は私より胸あるじゃない。
 千夏はこう言いました。こはるんのほうが胸はある。
 よし、勝負しよう、という話になりました。
 学校から件の本屋さんに向かう方面に、小金湯っていう名前の、スーパー銭湯と普通の銭湯の中間みたいなお風呂屋さんがあって、私と千夏は学校帰りに連れ立ってそこに向かいました。
 自動ドアを入ったところにある自動券売機で2時間の入湯チケットを買って、フロントのお姉さんに渡してロッカーの鍵を受け取って、女湯側の脱衣所に入りました。
 さて。
 夕方の銭湯は、まあそれほど混んではいませんでした。
 私と千夏のロッカーは隣り合っていて、二人して扉を開いて、通学カバンだけ先にロッカーに入れて、
 ちらりとお互いを見やってから――
 私と千夏は、多分に二人とも恥ずかしさを誤魔化す意味もあって、勢い良くワイシャツとブラウスとスカートを脱いで、下着姿で向かい合って立ちました。
 さすがに当日のブラまでは憶えてないですけど。
 ブラの上から見た感じは、引き分けでした。どうやら千夏も同じことを思ったようで、お互いに視線を交わし合って、うなずいて、こくりとつばを飲み込んで、ブラを外しました。
 ……勝負は、
 引き分け、のように見えました。
 お互い、何も言いませんでした。
 わずかな間があったあと――
 私はそっと、千夏の手に下がっていたブラを、手に取りました。
 何をするのかわかったのでしょう、千夏が小さく息を呑んで、
 私はそのブラを、自分の胸に、そっと当てました。
 ……。
 カップに、
 カップに、指一本入るくらいの隙間が、ありました。
 苦い勝利でした。
 いや、勝利と言っていいのか――試合に勝って勝負に負けた。わけじゃないですね。勝負には勝ったけど、何かで負けた感じでしょうか。
 私と千夏はショーツを脱いで、タオルで前を隠しながら洗い場に行って、シャワーで身体を軽く流してから、並んで湯船に浸かりました。
 私が「やっぱり千夏のほうがあるじゃない」と言って笑うと、千夏は申し訳無さそうに小さく笑みを浮かべて「でも、私は無駄な肉も多いし。こはるんくらい細ければよかったな」って言いました。
 そのあとは、いくつかあるお風呂を一緒に巡ったりしました。露天風呂と、ジャグジーみたいなのと、サウナと、打たせ湯もあったかもしれないです。
 ともあれ、それをきっかけに、私たちの距離は一気に縮まっていきました。

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