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ショートストーリー3(???) 1ページ目

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 12月23日。午後9時37分。
 東京神田神保町。六階建てマンション「ウッディベル」の、601号室。本棚だらけの部屋。電源の切れたテレビ。静かにうなる冷蔵庫。食卓の上に置かれた一冊の本。
 鳴りだしたスマートフォンを手にとって、ドライヤーの電源をオフにする。

 はい、遠藤です。お世話になっております。
 はい。大丈夫です。はい。
 あはは、そういう浮いた話はまったく。明日も仕事ですよ。
 えっと。
 なんていうか、女子高女子大で、そのあとは就職せずにデビューでしたから。
 ……え? 中学の頃ですか?
 うーん、引っ込み思案でしたし。
 あ、いえ、いいですいいです。なんていうか、そういうのは、私はちょっと。人それぞれだと思いますけれど、恋人が欲しいからっていう理由で恋人を作るタイプじゃないんですよ、多分。そういう相手が現れたらでいいっていうか。
 ……そういう言われ方をしちゃうと、反論の余地もないんですけれど。
 でもでも、私にだって恋バナくらいありますよ?
 ほんとですよ。実際にあった話です。体験談です。
 いくら私でも、現実と創作の区別くらいはついてますから。
 え、
 あ、いや、えっと……でも。
 別に話すのが嫌なわけじゃないんですけど。
 でも、ほら、あんまりお時間取らせるのも。
 ……。
 えっと、
 うー。
 それじゃあ、えっと、一つだけ約束してください。
 ……はい。
 絶対に笑わないでください。それだけです。
 いいですか? 絶対ですよ?
 はい。それじゃあ。
 ……。
 えっと、じゃあ、お話しします。
 私が、高校二年生の頃の話です。


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